ーー79経営成績に関する分析 当連結会計年度(2022年1月1日から2022年12月31日まで、以下「当期」)における国内の清涼飲料市場は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和にともなう人出の回復や経済活動の活性化、記録的な猛暑の影響により需要が増加したものの、清涼飲料各社の価格改定実施による需要へのマイナス影響もあり、数量ベースで前期比4%程度の増加となりました。また、原材料・資材・エネルギー価格の高騰や円安などが消費行動やビジネスに大きな影響をおよぼすなど、不透明かつ厳しい事業環境が続きました。 このようななか、当社は2022年を「持続可能な成長のための基盤づくりの年」と位置付け、着実かつ持続的な成長に向けた基盤の構築とさらなる変革の推進に取り組みました。営業分野では、新製品の展開や多様化する消費者ニーズへの対応、人出回復の機会を捉えた効果的なキャンペーンの実施などにより、販売数量および売上収益の成長を図りました。また、足元のコスト圧力への対応および将来の収益基盤の強化に向け、厳しい競争環境が継続するなか、業界に先駆け製品の価格改定を実施しました。価格改定については、カスタマーとの丁寧な交渉に努めるとともに、自動販売機を中心に早期の価格反映に取り組みました。製造・物流分野では、原材料・資材・エネルギー価格の高騰の影響を受けるなか、S&OP(Sales and Operations Planning)プロセスの刷新や、国内最大級の保管・出荷能力を備える自動物流センター埼玉メガDC(Distribution Center)や明石メガDCの活用など、急激な需要の増減に柔軟に対応できる供給体制の構築を進めました。最需要期である夏場には人出回復と猛暑が重なり需要が急増する局面があったものの、これらの取り組みにより、安定的に製品供給を行いました。また、製造設備の効率的な活用や物流ネットワークの見直しによるコスト削減にも取り組んできました。 さらに、社会との共創価値に基づくESG目標の実現に向けた活動にも注力しました。廃棄物ゼロ社会を目指す「容器の2030年ビジョン」の達成に向けた取り組みとしては、100%リサイクルPETボトルの採用拡大など、製品パッケージの設計面での取り組みを推進するとともに、自治体やパートナー企業との協働により良質な容器を着実に回収するためのリサイクルスキームの構築などに取り組みました。また、さらなる資源の循環利用に向け、アルミ缶の水平リサイクル「CAN to CAN」の仕組みを構築し、リサイクル素材を使用した製品の製造・販売を開始しました。温室効果ガス(GHG)排出量の削減に向けては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、情報開示の充実を図るとともに活動を推進しました。そのほか、ビジネスを通じた地域社会貢献としては、水源保全活動の実施やフードバンクへの製品寄贈、地域の活動を支援する自動販売機の展開などを実施し、多様性の尊重の一環としては、社内外の啓発の機会を通じたLGBTQの理解促進や働きやすい環境整備を目指した取り組みなどを推進しました。これらを含む当社のESGの取り組みは高く評価されており、当社は世界のESG投資の代表的指標「DJSI Asia Pacific」の構成銘柄に5年連続で選定されました。当期の業績の詳細は次のとおりです。 連結売上収益は、807,430百万円(前期比21,594百万円、2.7%増)となりました。価格改定による販売数量へのマイナス影響があったものの、人出回復や猛暑による需要増加の機会を捉えるべく、新製品の展開や多様化する消費者ニーズに応じたチャネルごとの取り組みを実施したことにより、販売数量は前期比3%の増加となりました。また、収益性の高いベンディングチャネルの数量成長や価格改定の実施によるケース当たり納価の改善が、売上収益の増加に貢献しました。なお、当第4四半期(2022年10月1日から2022年12月31日まで)には、10月に実施した小型パッケージ製品の価格改定により、ケース当たり納価は全チャネルで改善しました。 連結事業利益は、14,443百万円の損失(前期は14,662百万円の損失)となり、前期比増加(損失が減少)しました。数量成長や価格改定によるケース当たり納価改善の効果に加え、製造・物流効率の向上や変革の推進などによるコスト減少など、コントロール可能な分野においては約200億円の利益改善を実現したものの、原材料・資材・エネルギー価格高騰や円安などの外部要因によるコスト増加が大きく響く結果となりました。 連結営業利益は、11,513百万円の損失(前期は20,971百万円の損失)となりました。事業利益が前期比増加(損失が減少)したことに加え、有形固定資産売却益の増加や一時帰休にともなう休業手当費用(以下「一時帰休費用」)の減少による貢献があり、営業利益は前期比増加(損失が減少)しました。なお、当期のその他の収益(非経常的に発生した収益)には、有形固定資産売却益4,561百万円、雇用調整助成金3,329百万円などが含まれています。また、その他の費用(非経常的に発生した費用)には、一時帰休費用2,168百万円、抜本的な変革の実行に係る事業構造改善費用1,298百万円、希望退職プログラム実施にともなう特別退職加算金等1,104百万円、有形固定資産および無形資産の除売却損812百万円などが含まれています。 親会社の所有者に帰属する当期利益は、8,070百万円の損失(前期は2,503百万円の損失)となりました。営業利益が前期比増加(損失が減少)した一方で、前期に子会社であったキューサイ(株)の株式譲渡による売却益を非継続事業において計上していたことによる反動などから、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比減少(損失が増加)しました。2021年785,837△14,662△2,503(単位:百万円)2022年807,430△14,443増減率+2.7%△8,070業績概要 財務情報/会社情報2022年の経営成績の解説と分析売上収益事業損失(△)親会社の所有者に帰属する当期損失(△)(注1)事業損失(△)は、事業の経常的な業績をはかるための指標であり、売上収益から売上原価ならびに販売費及び一般管理費を控除するとともに、その他の収益およびその他の費用のうち経常的に発生する損益を加減算したものです。(注2)2021年の親会社の所有者に帰属する当期損失(△)については非継続事業も含めて表示しています。
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